理学療法士として臨床現場に立ちながら、スポーツバイオメカニクスの研究を行っている飯塚智樹です。
選手のフィジカルチェック結果や、三次元動作解析を用いた関節角度のデータなどをフィードバックシートとして一括出力する際、ExcelとWordの「差し込み印刷」機能は非常に重宝します。しかし、いざデータを差し込んでみると、「Excel上では『15.2』と綺麗に整っているのに、Wordに差し込むと『15.23333333…』のように無限に続いてしまう」というトラブルが頻発します。
本記事では、この数値フォーマットのズレをWord側の設定(フィールドコードの編集)で一発で解決する手順を詳しく解説します。レポート作成業務を効率化したい医療従事者や研究者の方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも「差し込み文書(差し込み印刷)」とは?
本題に入る前に、基本的な機能をおさらいしておきます。 Wordの「差し込み印刷」とは、Excelで作成した名簿やデータ一覧表の値を、Wordで作成した定型フォーマット(ひな形)の特定の場所に自動で流し込む機能です。
スポーツ現場や研究室では、以下のような場面で絶大な威力を発揮します。
- フィジカルテストのフィードバックシート作成(数十人分の測定結果を個別のレポートとして一括出力)
- 動作解析データの個人別レポート(三次元解析やIMUで算出した関節角度のExcelデータを、選手ごとのWord資料に流し込む)
- 学会やセミナーの参加者名札・案内状の作成
- 請求書や領収書の発行:顧客ごとに異なる金額や内容を自動で挿入する
- 会員証や名札の作成:連番のIDを含めた個人カードの作成するする
- 案内状や招待状の作成:宛名や日付、氏名等を個別に挿入する
手作業で数値をコピペすると必ずヒューマンエラー(入力ミス)が起きますが、この機能を使えば数百人分のデータでも数秒で正確にレポート化することが可能です。
差し込み印刷の基本的な手順
まずは「差し込み文書」のもととなるデータを作成していきます。
データは基本的にはExcelなどの表計算ソフトで作成していきます。作成するときには1行目にデータの種類を入力します。このラベルはSTEP4で説明する「差し込み文書」の「差し込みフィールドの挿入」で選ぶ際に使用するのでわかりやすい名前にしたほうが良いかと思います。
- 一般的な例: 「氏名」「住所」「売上金額」など
- 専門的な例: 「選手名」「歩行速度」「膝関節屈曲角度」「フィジカルテストのスコア」など
また、下の画像では対象者の情報をリスト化したものですが、1人のデータはすべて横に並べていく必要があります。差し込み文書は1行ごとに自動で読み込んでいくので、複数の行にわたって入力することはできません。

入力が終了したらデータを保存しておきます。この時、アドレスバーをコピーしておくと、STEP3で行う「宛先の選択」ですばやくデータにアクセスできます。
アドレスバーやファイルパスについては以下の記事をご覧ください。

「差し込み文書」のフォーマットとなる書式をWordで作成します。
このフォーマットを作成する際には、全体で統一して表示したい内容については打ち込んでしまってOKです。その他に、リストの対象者ごとに内容を変更したい箇所はこの段階では空欄にしておくか、わかりやすいようにハイライトなどしておくとわかりやすいかと思います。または、1名のデータを入力してしまっても後で差し込みした箇所がわかりやすいかと思います。
下の画像では簡単にラベルを入力し、コロンの右にデータを挿入していく想定で作成しました。

ExcelのリストとWordのフォーマットの書式ができたら、「差し込み文書」の設定を行います。
Wordで作成したフォーマットの書式から、上のタグの中から「差し込み文書」を選択します。
その中に、「宛先の選択」があります。クリックすると、「既存のリストを使用」がでてきますのでそこをクリックします。

クリックすると「データファイルの選択」というポップアップが開かれます。
ここで、先ほど作成したExcelのリストデータを選択して「開く」をクリックします。この時に、ファイルパスをコピーしておくとアクセスが非常に速くなります。

データを選択すると、「テーブルの選択」というポップアップが表示されます。ここでは、今回作成したExcelのリストデータで、リストが入っているSheetを選択します。選択し「OK」にします。

これで、作成したExcelのリストデータとWordのフォーマットの書式が紐づけられたかと思います。
データが紐づけらましたので、先ほど目印をしたデータを挿入したい箇所に入力をしていきます。
「差し込み文書」→「差し込みフィールドの挿入」をクリックすると、Excelで作成したリストの1行目のラベルが表示されます。挿入したい箇所にカーソルを合わせて、挿入したいラベルを選択します。

選択すると下の図のように、「<<ラベル名>>」で表示されます。
この状態になるとデータが挿入されています。

「差し込み文書」→「結果のプレビュー」を選択することで、実際にリストのデータを読み込んだ状態を表示することができます。
「差し込みフィールドの挿入」が終了したら、「完了と差し込み」から文書の印刷をまとめて行うことができます。印刷はページの選択も表示しているページだけでも印刷することが可能です。
基本的な差し込み文書の設定はこれで終了となります。
このような機能を使う際にはだいたい問題が生じることがありますが、めげずに対策していきましょう。
よくあるトラブルとその対処方法について以下に記載していきます。
トラブル1:小数点以下の桁数が多すぎる
差し込み文書で数値のフィールドを読み込んだ際に、少数点以下が長くなってしまうことがあります。特にExcelで関数で計算したデータを読み込むとセルに入っている数値がすべて読み込まれてしまいます。これは、Excelでのセルの書式設定では「差し込み文書」は修正されません。
そのため、「差し込み文書」を行ったWordで小数点以下何桁まで表示するかを設定することが必要です。
下記のキーボードで示したように、Alt + F9を同時に押すことで差し込み文書で挿入したフィールドの書式設定を表示することができます。

STEP1で表示したフィールドのコードは下記のようになっていると思います。
{ MERGEFIELD 数値 }
この数値の後ろに、「¥#”0.00″」を入力して桁数を指定していきます。この場合は小数点以下2桁まで表示する設定です。この「”0.00″」の部分を修正することで小数点以下何桁まで表示するかを選ぶことができます。そのため、小数点以下1桁にしたい場合は「¥#”0.0″」になります。
{ MERGEFIELD 数値 ¥#”0.00″ }
「¥#”0.00″」の前後には半角スペースが入っているので注意してください。
再度、Alt + F9を押すことで表示を戻すことができます。
結果のプレビューで数値の表示が修正されているかを確認してみてください。
トラブル2:リストを更新したのに「差し込み文書」に反映されない
「差し込み文書」をした後にExcelのデータリストを修正した場合にリアルタイムでは変更されません。
リストを修正した場合には、Excelデータを「上書き保存」したうえで、Wordのフォーマットの書式データを開きなおすか、「差し込み文書」→「宛先の選択」をやり直すとリストが修正されたかと思います。
また、別のシートを読み込みたい場合には再度、「宛先の選択」を行う必要があります。この時に、ラベルの名前が変わっていると読み込みがなされないことがあります。必ず同じデータのラベルは統一するようにしましょう。
トラブル3:差し込み文書の印刷で無駄にたくさん印刷されてしまう
「差し込み文書」でまとめて印刷をした際にデータが完全に入力されていないデータまで印刷されてしまいます。このような無駄な印刷をなくす方法になります。
「差し込み文書」では一部でもデータが入っている場合にはリストとして読み込んでしまいます。
例えば、リストにIDなどが割り振られている場合です。これからデータを足していくつもりで、IDだけたくさん作成してしまうと、IDだけが挿入されるデータが印刷にかかってしまいます。
このような場合にはリストをデータが入力終わっているところまでにするか、印刷の範囲を設定する必要があります。
トラブル4:日付が謎の数字(シリアル値)になる場合
フィジカルテストの「測定日」や、患者の「手術日」としてExcelに「2026/09/22」と入力したのに、Wordでは「46317」のようなシリアル値(Excel内部の管理番号)になってしまうエラーです。
これも先ほどと同じ手順(Alt + F9)でコードを表示し、末尾に日付フォーマットを指定するコードを追記します。
変更前:{ MERGEFIELD “測定日” }
変更後:{ MERGEFIELD “測定日” \@ “yyyy/M/d” }
(※「2026年9月22日」のように日本語表記にしたい場合は、「 \@ “yyyy年M月d日” 」と入力し、最後にF9で更新してください)
トラブル5:先頭の「0」が消えてしまう(0落ち)場合の解決策
研究データの「被検者ID(例:001)」や、チーム内の「選手背番号(例:018)」を差し込む際、Word上では先頭の0が消えて「1」「18」となってしまう現象(0落ち)です。
同様にコードを表示し、末尾に桁数を固定するコードを追記します。常に3桁で表示させたい場合は「 \# “000” 」と入力します。
- 変更前:{ MERGEFIELD “被検者ID” }
- 変更後:{ MERGEFIELD “被検者ID” \# “000” }
入力後、Alt + F9で元の画面に戻し、F9で更新すれば指定した桁数で固定されます。
まとめ:ツールを使いこなして「現場のデータ活用」を加速させよう
Wordの差し込み印刷で起こる「Excelデータのフォーマット崩れ」は、手作業で1つずつ直す必要はありません。Word上で Alt + F9 を押し、フィールドコードに以下のスイッチを追記するだけで一瞬で解決できます。
- 小数点の桁数指定: \# “0.0”
- 日付のシリアル値修正: \@ “yyyy/M/d”
- 先頭の0落ち防止: \# “000”
数百人のフィジカルテスト結果や動作解析のレポートを作成する際、こうした少しのITスキルを知っているだけで、事務作業の時間は劇的に削減されます。手作業の修正をなくすことは、臨床での患者様との時間や、研究の本質的な考察に充てる時間を確保することに直結します。
さらなる業務効率化・データ処理を求める方へ
私自身、膨大な三次元動作解析データやIMUデータを扱う中で、「作業環境への投資」と「コードによる自動化」は最も費用対効果が高いと感じています。
処理落ちやフリーズに悩まされている方は、私自身も研究・執筆のメイン機として愛用している ThinkPad X1 Carbon のようなデータ処理に強いPCへのアップデートを強くおすすめします。
【作業環境のアップデートを検討中の方へ】 私はデータ処理や論文執筆のメイン機として「ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition」を使用しています。出先ではBluetooth静音マウスを組み合わせることで、ストレスのない環境を構築しています。 (※機材の詳細は後日追記します)
【動作解析ツール(MATLAB / Python)のご案内】 私が代表を務めるスポーツ医科学プロジェクト『MOTUS』では、現場が求める指標に自動処理・変換するための実践的なコード(MATLAB / Python)をnoteにて公開予定です。準備が整い次第、こちらでお知らせします。
現場の感覚を「データ」という共通言語に変換し、より良いスポーツ医科学サポートを共に実践していきましょう。


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